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東京地方裁判所 昭和39年(ワ)1946号 判決

原告 株式会社 大岩商会

右代表者代表取締役 大岩正平

〈外三名〉

右原告ら訴訟代理人弁護士 大橋光雄

同 辻畑泰輔

被告 加藤工業株式会社

右代表者代表取締役 加藤賢史

右訴訟代理人弁護士 新谷春吉

主文

一、被告は、

(一)  原告株式会社大岩商会に対し八四万七、三八八円、

(二)  同泰明工業株式会社に対し二五七万五、〇〇〇円、

(三)  同信和工業株式会社に対し四〇〇万二、七八〇円、

(四)  同有限会社泉水製作所に対し八七万一、〇〇〇円、

およびそれぞれに対する昭和三九年三月一三日以降右当該金員完済に至るまで年六分の割合による金員を支払え。

二、原告信和工業株式会社および同有限会社泉水製作所のその余の請求をいずれも棄却する。

三、訴訟費用は、

(一)  原告株式会社大岩商会および同泰明工業株式会社と被告との間においては、全部被告の負担とし、

(二)  原告信和工業株式会社と被告との間においては、被告について生じた費用を二分し、その一と、他の一および同原告について生じた費用の合算額の六分の五とを被告の負担とし、右合算額の残余六分の一を同原告の負担とし、

(三)  原告有限会社泉水製作所と被告との間においては、被告について生じた費用を六分し、その五と、他の一および同原告について生じた費用の合算額の二分の一とを被告の負担とし、右合算額の残余二分の一を同原告の負担とする。

四、この判決は、第一項に限りかりに執行することができる。

事実

注、以下においては、原告会社らそれぞれを、原告大岩、同泰明、同信和、同泉水と略称する。

別紙各目録中、満期、振出日および貸付日各欄の記載はいずれも昭和三八年の月日を示すものとする。すなわち、たとえば、一〇、一〇とあるは、昭和三八年一〇月一〇日の意である。

第一、申立

一、原告らは、左記のうち各自関係部分と同旨の判決および仮執行宣言を求める。

「被告は、原告大岩、同泰明に対し、それぞれ主文第一項(一)(二)と同じ金員、原告信和に対し四七八万二、七八〇円、原告泉水に対し一六四万一、〇〇〇円、およびそれぞれに対する昭和三九年三月一三日以降各完済に至るまで年六分の割合による金員を支払え。

訴訟費用被告負担。」

二、被告は、「各請求棄却」の判決。

第二、原告ら主張の請求原因

一、原告大岩

(一)  原告大岩は、被告が同原告に対して振出した、別紙第一目録記載の約束手形五通の所持人である。

(二)  よつて、同原告は被告に対し、右手形金合計八四万七、三八八円およびこれに対する昭和三九年三月一三日(訴状送達の翌日)以降右完済に至るまで商事法定利率年六分の遅延損害金の支払を求める。

二、原告泰明

(一)  原告泰明は、被告が同原告に対して振出した、別紙第二目録記載の約束手形一二通の所持人である。(同目録(1)(2)の手形は、いずれも原告から城南信用金庫に裏書したが、満期に不渡となつて、同金庫から原告が返還を受けたものである。)

(二)  よつて同原告は被告に対し、右手形金合計二五七万五、〇〇〇円およびこれに対する昭和三九年三月一三日(訴状送達の翌日)以降右完済に至るまで商事法定利率年六分の遅延損害金の支払を求める。

三、原告信和

(一)  原告信和は、被告が同原告に対して振出した、別紙第三目録記載の小切手および約束手形の所持人である。

(二)  右原告は、同目録(3)の小切手を昭和三八年九月一七日、同(4)の小切手を同月一六日、それぞれ支払人に呈示したが支払を拒絶されたので、各小切手に右呈示の日を表示して同日付を附した支払人の支払拒絶宣言を得た。同(2)の小切手の支払呈示はしていない。

(三)  よつて、右原告は被告に対し、右小切手および手形金合計四七八万二、七八〇円およびこれに対する昭和三九年三月一三日(訴状送達の翌日)以降右完済に至るまで年六分の金員(小切手金部分については小切手法所定の利息、手形金部分については商事法定利率による遅延損害金)の支払を求める。

四、原告泉水

(一)  原告泉水は、被告が同原告に対して振出した、別紙第四目録一記載の小切手三通の所持人である。ただし、それらはいずれも支払呈示をしていない。

(二)  右原告は被告に対し、同目録二記載のとおり金員を貸渡した。

(三)  右原告は、昭和三八年八月一七日、被告が流通におかない特約のもとに、見せ手形として、被告に対し同目録三記載の約束手形二通を振出した。ところが、被告は右特約に反して右手形二通を他に譲渡したため、右原告は、各満期に各手形金を支払わざるを得なくなつてそれぞれ支払い、各手形金合計五〇万円相当の損害を蒙つた。

(四)  右原告および被告はいずれも株式会社である。

(五)  よつて、右原告は被告に対し、右小切手金、貸金および損害金合計一六四万一、〇〇〇円およびこれに対する昭和三九年三月一三日(訴状送達の翌日)以降右完済に至るまで商事法定利率年六分の遅延損害金の支払を求める。

第三、被告の答弁および抗弁

一、原告ら主張事実は、次に掲げる各事実を否認し、その余は全部認める。

(一)  別紙第一目録(4)の手形に関する原告大岩の主張事実。

(二)  別紙第三目録(2)の小切手振出および(5)(7)(9)(10)(12)(21)(26)の各手形に関する原告信和の主張事実。

二、(抗弁)

(一)  対原告信和関係

被告は、別紙第三目録(3)(4)の小切手を先日付にて振出したものであるところ、それらについては右各小切手記載の振出日までに、原告信和に対し各小切手を送金して支払済である。

(二)  対原告泉水関係

被告は、同第四目録二の(1)については昭和三八年五月二五日までに、同(2)については同年九月一七日までに、同(3)については借入日頃に、それぞれの借入金を原告泉水に送金して支払済である。

第四、原告信和および同泉水の答弁

被告主張の抗弁事実はいずれも否認。

第五、証拠関係≪省略≫

理由

一、原告大岩関係

原告大岩の主張事実は、別紙第一目録(4)の手形に関する部分を除き、被告の自白するところである。

≪証拠省略≫によれば、右(4)に関する原告主張事実を認めることができ、右認定に反する証拠はない。

以上の事実によれば、同原告の請求は全部正当にして認容すべきである。

二、原告泰明関係

原告泰明の主張事実は全部被告において認める。

よつて、同原告の請求は正当として認容する。

三、原告信和関係

(一)  原告信和の主張事実は、別紙第三目録(2)の小切手振出および(5)(7)(9)(10)(12)(21)(26)の各手形に関する部分を除き、同原告と被告との間において争がない。

(二)  ところで、右(2)の小切手が支払呈示されなかつたものであることは、同原告の自認するところであり、同原告は他に主張しないので、同原告の右小切手金請求は遡求権行使の要件を欠くものとして、排斥を免れない。

(三)  ≪証拠省略≫によれば、前記(10)(21)(26)の各手形に関する原告信和の主張事実を認めることができ、右認定に反する証拠はない。

(四)  ≪証拠省略≫によると、原告信和は前記(5)(7)(9)(12)のとおりに記載ある約束手形を所持していることを認めることができる。

しかしながら、原告信和代表者本人尋問の結果によると、甲第二八、第三三号証はいずれも被告会社から振出を受けたものではなく、同原告代表者の錯誤により振出された不真正なものであること、第二六、第三〇号証はいずれも(原本として提出されているが)実は写であつて、その原本は同原告が他において割引を得た関係上、現在所持していないものであることを認めるに十分である。右認定を覆して同原告の右(5)(7)(9)(12)に関する主張事実を認め得る証拠はない。ゆえに、それらの手形金請求部分も亦排斥することとする。

(五)  被告の原告信和に対する抗弁は、被告会社代表者本人尋問の結果中に右主張にそうかの如き部分があるが、それとても明確を欠いて信用力にとぼしく、未だ右主張事実の認定資料とするわけにいかず、他に証拠がないから採用できない。

(六)  よつて、原告信和の請求は、右(二)(四)以外の部分のみ正当であるから認容する。

四、原告泉水関係

(一)  原告泉水の主張事実は全部被告において自白する。

(二)  しかしながら、同原告の小切手金請求部分は、原告信和関係の(二)と同じ理由により排斥すべきものとする。

(三)  被告の原告泉水に対する抗弁は、被告株式会社代表者本人尋問の結果によるも認めるに足りず、他に証拠がないから採用できない。

(四)  よつて、原告泉水の請求は、右(二)以外の部分のみ正当として認容する(同原告の請求原因事実(三)に基く請求は、債務不履行に基く損害賠償請求であるが、その基本たる本来の債権関係は商行為によるものであり、右損害賠償請求権は右基本債権関係と密接不可分の関係にあること明らかであるから、被告の本件損害賠償債務も亦商行為によつて生じたものと認めるを相当として、同原告の右請求部分についても商事法定利率による遅延損害金の請求を認容するものである。)

五、そこで、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条、第九二条、仮執行宣言につき同法第一九六条第一項を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 奥平守男)

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